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【2024年度最新版】

使いやすくなった雇用調整助成金

「売上は減ったけれど従業員は減らしたくない」「もっと高度な技術を身につけさせて売上アップにつなげたい」

事業によっては従業員のスキルレベルが売上に大きく関わることもあるでしょう。また売上が減少したからといって、おいそれと従業員に雇い止めを言い渡せないものです。

このような場合に利用できるのが雇用調整助成金です。

従業員を一時的に休業させたり、教育訓練を受けさせたりした場合に助成金が受け取れます。特に令和6年(2024年)は教育訓練の項目が使いやすくなりました。

今回は、従業員のスキルアップで受け取れる雇用調整助成金について解説いたします。

雇用調整助成金

教育訓練にも利用できる雇用調整助成金とは

雇用調整助成金とは、事業活動の縮小を余儀なくされた事業主に対して、従業員の雇用維持を図るために休業や教育訓練、出向に要した費用の一部を助成する制度です。

主な条件は以下の3つです。

  1. 雇用保険適用事業主であること
  2. 売上が減少していること
  3. 休業や教育訓練等が一定以上実施されていること

雇用の安定を図る目的のため、大規模災害等が発生した場合は特別措置が取られることもあります。これまでに、新型コロナウイルス感染症や令和6年能登半島地震に伴う特例措置等が実施されました。

2024年4月の変更内容

20244月には、リスキリングを強化するという観点から、休業よりも教育訓練を選択しやすくなるように見直しが行われました。変更点を確認しましょう。

助成率と加算の変更

これまで中小企業の助成率は2/3、加算額1,200円で一律でした。

しかし今後は、教育訓練実施率により増減することとなりました。

なお累計の支給日数が30日に達した判定基礎期間までは、これまで同様です。

中小企業の今後の助成率と加算額
(累計支給日数が30日に達した判定基礎期間の次の判定基礎期間から)
教育訓練実施率 助成率 教育訓練加算額
1/10未満 1/2 1,200円
1/10~1/5未満 2/3 1,200円
1/5以上 2/3 1,800円

教育訓練実施率とは、休業等の延日数のうち、教育訓練を実施した日数の割合を示します。

この変更により、一定以上の教育訓練をさせると助成率が高くなり、加算額も多くもらえることになりました。

つまり教育訓練を積極的に利用した方が、助成額をグッと増やせるのです。

支給対象の変更

支給対象となる教育訓練の要件が変更となりました。

休業や出向はこれまでどおりです。 

支給対象となるのは「事業所内で経験等を有する者が講師役となり、安全性や生産性向上の講習等を実施するもの」「外部講師を招いて講習等を実施するもの」「外部のセミナーや訓練等に参加するもの」です。

なお、過去に実施した教育訓練を同一人に実施する行為や、技能実習生に実施する教育訓練は支給対象となりません。

詳細は下記でご確認ください。

申請書類の追加

休業で雇用調整助成金を申請する場合、下記の書類が追加で必要になりました。

  1. 源泉所得税の直近の納付を確認できる書類(写)
  2. 判定基礎期間における支給対象労働者全員分の源泉徴収簿
  3. 給与振込を確認できる書類(写)

出向や教育訓練で申請する場合の書類追加や変更はありません。

2024年の雇用調整助成金の概要

上記変更点を踏まえ、20244月以降の雇用調整助成金の概要をまとめます。

受給要件

主な受給要件
  1. 雇用保険適用事業者であること
  2. 直近3カ月間の売上等が前年同期に比べて10%以上減少していること
  3. 雇用保険被保険者や派遣労働者が直近3カ月間で10%を超えかつ4人以上増加していないこと(中小企業の場合)
  4. 対象労働者の雇用期間が6カ月以上

なお売上の減少は「景気の変動、産業構造の変化その他の経済上の理由」とされており、季節的なものや事故または災害を理由とする場合は要件を満たしません。

不支給要件

本助成金の申請を行う前に不支給要件に該当していないかの確認が必要となります。

以下の要件のいずれかに該当している場合は助成金の支給が受けられません。

  1. 雇用調整助成金の不正受給から一定年数を経過していない
  2. 不正支給に関与した役員等がいる
  3. 労働保険料の滞納
  4. 1年以内に労働関係法違反により送検処分を受けた 等

助成率と受給額

休業と教育訓練、出向で、助成率や助成額の算定基準が異なります。

どの助成率があてはまるのか事前にご確認ください。

休業や教育訓練

累計支給日数が30日以内とそれ以上で助成率等が変わります。

事前に算定したい場合は、厚生労働省「雇用調整助成金の様式ダウンロード」より、教育訓練実施率等算定シートをご利用ください。

累計の支給日数が30日に達した判定基礎期間まで
企業規模 助成率 教育訓練加算額
中小企業 2/3 1,200円
累計の支給日数が30日に達した判定基礎期間の次の判定基礎期間以降
企業規模 教育訓練実施率 助成率 教育訓練加算額
中小企業 1/10未満 1/2 1,200円
1/10~1/5未満 2/3 1,200円
1/5以上 2/3 1,800円
出向

出向させた場合の助成額は、以下の算式で計算できます。

 

出向元事業主の出向労働者の賃金に対する負担額×助成率

 

なお出向元事業主の出向労働者の賃金に対する負担額は、出向前の通常賃金の概ね1/2が上限額です。

また助成率は、中小企業:2/3、大企業:1/2です。

支給対象となる教育訓練と例

今回の変更で、教育訓練を選択する経営者が増えるものと思われます。

そこで本記事では支給対象となる教育訓練について、詳しく解説いたします。

休業や出向の場合は別の要件が設定されていますので、詳細は厚生労働省のサイトをご確認いただくか社労士や税理士にお尋ねください。 

 

対象となる教育訓練は、下記6つをすべて満たす必要があります。

  1. 労使間の協定によるもの
  2. 事業主が指定した対象期間内に行われる
  3. 判定基礎期間における対象労働者に係る休業又は教育訓練の実施日の延日数が、対象労働者に係る所定労働延日数の1/20(大企業の場合は1/15)以上となるもの
  4. 職業に関連する教育や訓練である
  5. 所定労働日の所定労働時間内において実施される
  6. 事業所内訓練または事業所外訓練に該当する

<事業所内訓練と事業所外訓練>

事業所内訓練とは、使っていない生産ライン等を使用して行う教育訓練等のことです。このとき、通常の生産活動と区別しなければなりません。

たとえば経験豊富な者が講師となり講習等を実施することや、事業所内に講師を招いて講習等を実施すること、また会議室等を開放してオンライン講座を受講することも事業所内訓練に該当します。

 

事業所外訓練とは、外部のセミナーや講習等に労働者が参加するタイプの教育訓練です。官公庁や地域において産業や中小企業を支援する機関等が実施する講習等が該当します。

ただし、講演が実施されない意見交換やイベント等は除外されます。

雇用調整助成金の申請から受給までの流れ

雇用調整助成金を受給するためには、以下のようなプロセスを踏みます。

  1. 雇用調整の計画
  2. 計画届の提出
  3. 雇用調整の実施
  4. 支給申請
  5. 助成金受給

ここで注意したいのは、事前に計画届を提出しなければならないことです。

都道府県労働局またはハローワークに対して、計画届と添付書類を提出してください。

事前提出がなかった場合、雇用調整助成金の支給対象とはなりません。ご注意ください。

また雇用調整を実施した後、自動的に振り込まれるわけではありません。支給申請を行い審査を受けた後に受給可能となります。

まとめ

雇用調整助成金は、従業員を減らさずに立て直しを図る際に最適な助成金です。

休業や出向に対する助成も含まれますが、今年は教育訓練への助成が強化されました。

たとえば事業所内に従業員を集めて講習会を開くことも、一定の基準を満たせば雇用調整助成金の支給対象となります。

助成金を上手に活用して、従業員のスキルアップと売上アップを叶えましょう。

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