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法人成りした際の会計処理の仕方

個人事業主から法人成りした場合、事業を法人に移動させるためにいくつかの処理が発生します。

今回のコラムでは、法人成りした際の処理を具体的にまとめました。

会計処理以外にも知っておくべき事項をまとめましたので、ぜひ最後までお読みください。

記事の内容を参考に、法人成りの第一歩として的確に処理を進めましょう。 

法人成りした際の会計処理の仕方

法人成りした際の処理

法人成りした際に必ず必要となる処理は以下の三点です。

事業に必要な資産や負債を会社に引継ぎ(移動)

事業に関連する資産や負債を個人から法人に引継ぎます。

たとえばネットショップ等の場合は在庫を保有しているはずです。

この在庫は事業に必要となる資産ですから、法人に引継ぎ処理を行います。

同様に、融資を受けている場合の残債は事業に必要な負債です。こちらも法人に引継ぎ処理を行うのが一般的です。

反対に、個人の預金や事業に関係しない持ち物等は引継ぎしません。

引継ぐための会計処理方法は下記にまとめましたのでご参照ください。

まずは法人に引き継ぐべき資産と負債を書き出しましょう。

個人事業主の廃業届の提出

「法人成りする=個人事業主でなくなる」ということですので、個人事業主の廃業届を提出します。

「事業廃止届出書」を国税庁HPまたは税務署の窓口で入手し、記入した後に税務署へ提出します。その際、新しく設立した会社の社名、代表取締役社長の氏名、会社の納税地等も記入してください。

なおその他にもケースによって提出すべき用紙があります。 

  • 青色申告を選択していた:所得税の青色申告の取りやめ届出書
  • 消費税を納税していた:消費税の事業廃止届出書
  • 給与を支払っていた:給与支払事務所等の廃止届出書

 設立した法人が消費税の支払いや給与支払いを引継ぐ場合も提出します。

個人事業主の確定申告書の提出

法人成りした初年度は、個人事業主と法人に分けて2種類の申告を行います。

個人事業主としての確定申告は普段どおり2/16〜3/15です。

ただし地方自治体に納付する個人事業税に関しては、各自治体が納付期限を定めていますのでご注意ください。

なお個人事業主としての確定申告では、売上・経費共に引継ぐまでの数値を用います。

法人成りした後の売上や経費は、法人側で計上してください。

法人成りで引継ぎした際の会計処理

個人事業主から法人成りした際に引継いだ資産や負債の会計処理を解説します。

棚卸資産(商品など)

基本的には「個人から法人へ資産を売却する」という手続きを踏みます。

原則としては通常の取引価格で譲渡したとして計上しますが、資産が通常の取引価格の約70%未満の場合には、取引価格の70%相当額での譲渡になります。

「資産が通常の取引価格の約70%に満たない場合」とは、流行遅れや賞味期限間近等で商品価値が下がった場合のことです。 

なお上記のように個人から法人に資産を売却した場合、個人事業主側は事業所得の売上として、法人側は仕入れとして計上します。

借入金や負債

法人成りの前に、借入残高のある金融機関に相談しましょう。

個人名義の融資を法人へ変更する場合、再度融資審査が必要になるためです。

審査に通過すれば、法人名義で新たに借入したものとして会計処理します。

万が一審査落ちした場合は、個人名義のまま返済を続けることになります。

一般的に、借入金や負債は法人に引継がず個人が保有し続けることが多いようです。理由は簡単で、引継ぎのためだけに契約書等の取り交わしが発生するためです。

土地や店舗

土地や店舗といった固定資産を法人に引継ぐ場合は、個人から法人へ「時価で」売却したとして会計処理します。

この場合、個人事業主側の事業所得ではなく、譲渡所得として扱うことがポイントです。

なお店舗や車両のような減価償却資産について、引継いだ法人側は中古資産の耐用年数に基づいた減価償却の処理を行います。

リース資産

個人名義で契約していたリース資産を法人へ引継ぐ場合は、一般的に法人へ名義変更します。

リース会社に連絡して、法人への名義変更を依頼しましょう。

個人事業主側は、時価で売却したものとして会計処理します。

法人側は引継ぎ後「リース債務」という勘定科目を作成し、リース料支払いの都度、リース債務を取り崩します。

法人成りした後の所得について

法人成りした後、個人事業主であったあなたは役員に就任し、会社から給与を受け取ることになるでしょう。

その他にも、会社の株を保有し配当を受け取ったり、会社に土地や建物を貸して賃借料を受け取る可能性もあります。

これらの会計処理についても知っておきましょう。

  • 役員報酬:給与所得
  • 配当金受取:配当所得
  • 賃借料受取:不動産所得

 どれも事業所得ではありません。所得の種類を把握してしかるべき処理を行ってください。

まとめ

基本的に個人事業主から法人成りした際には、資産や負債を「法人へ売却」します。

無償で譲渡するわけではありませんのでご注意ください。

また個人事業主と法人は別ものとして扱われるため、会計処理以外にも「個人事業の廃業手続き」や「最終の確定申告」といった処理を伴います。

もし1人で正確に処理しきるのは大変だと感じたら、お早めに税理士へご相談ください。

法人成りに関する処理を的確にこなし、法人としてのスタートを簡単にしてくれるでしょう。

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